日本の エレキギター の歴史と業界 第6話 | THEONE | ハイエンド エフェクターなどの解説
エレキギター の歴史と業界 第6話
日本の中での エレキギター 歴史の第4、5話では、70年代入っての楽器問屋、商社と製造会社(マツモク、フジゲンなど)の関係を紹介してましたが、今回は70年代末から80年代初頭のスーパーコピーモデル戦争の時代を紹介していきたいと思います。
このスーパーコピーモデルの競争は、70年代中頃からTokai、フェルナンデスがエレキギターを扱い始めてからリアルコピーにシフトしていきます。既にGrecoなどのブランドで、完成度の高いコピーモデルを生産されており人気を集めていましたが、それまでのコピーモデルは同時期のGibson、Fenderコピーでありレスポールモデルはメイプルネック、ストラトはラージヘッドが殆どでした。しかし、多くの来日アーティストが手にするのは、マホガニー材ネックの50年代レスポールやスモールヘッド期のストラトであり、音楽雑誌の情報や音源によって徐々に現行スペックではなく、50年代、60年代スペックのレスポールやストラトに関心が集まってきました。
そんな中、Tokaiは58年型レスポール『バースト』を忠実に再現したモデルを発売します。当時、国内では、Gibsonが1958年から1960年まで生産されたいわゆる『バースト』などは希少で、「学生街の喫茶店」という曲で有名なGAROメンバー日高富 明氏が所有するバーストの研究分析を徹底的に行い黄金期のレスポールである『バースト』のコピーモデルを誕生させました。
日高氏は70年代、当時の現行のGibsonやFenderより、古い50〜60年代の同ブランドのギターの方が楽器として優秀であることを知り、実際にアメリカに赴き、これらを入手していたようです。
現在のようにヴィンテージギターとしての付加価値が確立する以前に、実際に1970年代からエリッククラプトンは50年代ストラトのブラッキー、ジミーペイジ、ポールコゾフなどは50年代のバースト・レスポールを使用していました。
ストラトモデルも氏の持つ楽器、アドバイスを参考にスパゲッティロゴ期のコピーモデルを発売しました。
Tokaiは1970年からアコースティックギターの製造を経て、1971年にアコースティックギターブランドMARTINの正規代理店として輸入販売業を行っており、MARTINのアコギ製造ノウハウを吸収しており、自社のアコギブランド『Cat’s Eye』の生産も1970年代中頃に始めていました。
フェルナンデスは70年代からコピーモデルを手掛けておりましたが、フェンダー系のコピーモデルを『フェルナンデス』ブランド、ギブソン系コピーを『バーニー』ブランドとして、コピーするブランドによってブランド名を分ける販売戦略を行うことで、他社の異なり細かな開発を行って製品をプロデュースしていると購買層に意識付けを行い、人気メーカーの1つとして支持を得ていました。
そして70年後半から80年代にかけては、ヴィンテージ期のレスポール、ストラトを細部に渡り研究したデットコピー『リバイバルシリーズ』発売します。フェンダー、ギブソンのみならず、アレンビック、B,Cリッチなど多くのデットコピーモデルを手掛けていきました。
当然、70年代にGrecoブランドのEGシリーズ、SEシリーズで国内コピーモデル市場を牽引してきた神田商会もヴィンテージ期の開発を進め、『スーパーリアルシリーズ』を手掛けることになります。神田商会は70年代の多岐にわたる エレキギター 振興での業務の中で、楽器店スタッフ、国内外アーティスト、雑誌媒体などヴィンテージ期のギブソン、フェンダーに精通している人脈があり、フジゲンと開発を進めギター本体からピックアップまで精巧なコピーモデル『スーパーリアルシリーズ』を手掛けていきました。
この3社を中心にデッドコピー戦争と言える時代が70年代から80年代初期に繰り広げられたことにより、国内ブランドの製造技術力が飛躍的な向上をもたらされたと言えます。
雑誌媒体のムック本などの出版によって、現在では『ジャパンヴィンテージ』とカテゴライズされ、市場で価格高騰を生んでいるのは、この時期に生産されたモデルが中心であり、採算面を度外視で各社が研究開発を行い、その完成度が再評価されたことにあると言えます。このような背景もあり、Vintage Guitarへの関心が高まり始め(当時はオールドギターと一般的に呼ばれていました)最初のブームが始まりました。
この時期の本家、Gibson、Fender両社は、50年代~60年代の黄金期から親会社が代わっており、新たな会社の経営戦略もあり迷走を続け、楽器製造のクオリティー定価を招いており「暗黒の時代」と現在では揶揄されています。
同時期に本家Gibson、Fender黄金期のモデルを研究して製品化し、製造スキルを向上させて国内メーカーとは、実に対照的です。
この当時に生産された国産のコピーモデルは海外でも人気があることを著者自身が体験したことが有ります。
2000年代の中頃だったと思うのですが・・
取引先アメリカディーラーに「友人が小規模ながらヴィンテージギターショウを開催するので行ってみて」とのことで、金額が合えば何本か購入しようと思いヨーロッパまで足を向けました。アメリカのギターショウなどとは違いローカルなショウで日本人ディーラーは皆無でした。
残念ながらビジネスになるような金額でのギターは有りませんでしたが、あるブースを見ると全てTokaiのレスポール、ストラトがディスプレイされていました。「なんだ?」と思いブース内のギターを見ていると、スタッフに話しかけられ、私が日本人だとわかると日本の楽器について矢継ぎ早に多くの質問をされました。
彼らはドイツ人のディーラーだったと思うのですが・・・その後、Tokaiの1980年前後のカタログを持ってきて内容を説明してくれと言うのです。この当時Tokaiのカタログは説明文、スペックが全て手書き(もちろん日本語)による印刷になっており、翻訳するのも難しかったのでしょう。とにかく熱烈なTokaiのコピーモデルファンでショウの間、殆ど日本製コピーモデルの話をしていたように記憶しています。
このような日本の エレキギター 製造クオリティーの高さ、本家Gibson、Fenderの技術力の低下、販売不振また、日本製コピーモデルの駆逐など、様々な背景から80年代に『フェンダージャパン』、『オービルby Gibson』が誕生していくことになります。
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