LATEST POST

近代Marshallサウンドの方向性を決定づけた JCM800 シリーズのキャビネット1960A |

全世界マーケットを視野に投入された JCM800 シリーズ

1980年代に入りMarshallが投入した JCM800 シリーズは、60年代からロックサウンドを確立してきたマーシャルサウンドに新たな方向性を示したモデルであり、その後のハイゲインサウンドを切り開いたパイオニア的な存在と言え、歴史的な転換を生んだモデルです。
60年代からMarshall製品の流通は総販売代理店である『ローズモーリス社』によって世界に販売されておりましたが、15年間の代理店契約完了を期に、アメリカを中心に世界進出を狙いデザインも一新した JCM800 シリーズが投入されました。
それまでフラッグシップモデルであった100Wモデルの1959SuperLeadや50Wモデル1987SuperLeadは、JCM800シリーズに組み込まれましたが、このシリーズがマーシャルアンプ史上最大のセールスを生んだモデルは、マスターヴォリュームを備えた100Wモデルの『2203』と50Wモデルの『2204』です。

70年代まではPAシステムが現在のようには確立しておらず(ヴォーカルアンプなどと呼ばれていた)ギタリスト達は自身のアンプによってサウンドをオーディエンスに伝える必然性から大音量をもたらすアンプが求められていましたが、70年代後半から徐々にPAシステムも充実が図られる中、ギタリストは必要以上の大音量から解放され、理想とする音量でのサウンドメイクに集中することが可能になりました。『2203』『2204』などのM,ヴォリュームを備えたモデルは既に70年代中期ごろにラインナップされていましたが、このような背景もありJCM800発売時期とニーズが重なったことで新たなフラッグシップモデルとなったのでしょう。

JCM800
画像引用:https://www.russomusic.com/products/1982-marshall-jcm800-2203-guitar-amplifier-w-4×12-1960-straight-cabinet-used

JCM800は何故、歴代Marshallの中で最も支持されたのか?

70年代から80年代にハードロック~N,W,O,B,H,M~L,Aメタルとロックが進化してゆく中で、Marshallユーザーのギタリスト達も新たに登場した JCM800に乗り換えていくことになります。人気を博したM,ヴォリュームモデルの『2203』、『2204』でも現代のハイゲインディストーションサウンドのような歪みではありませんが、トラディショナルMarshallサウンドである攻撃的な高音域、厚みのある中音域、ブミーにならずタイトで重厚な低域は継承されており、同時期に登場した数々の高性能な歪系ペダルを併用することで自身のオリジナルサウンドを構築しており、ハードロックを代表するサウンドが生み出されました。

日本国内でのMarshallアンプの普及に関してはどうだったのでしょうか?
アマチュアバンドを中心にハードロック全盛期で、リハーサルスタジオが各地で新規オープンする時代背景でした。マーシャルアンプ輸入代理店のヤマハの営業力もあり(現在もYAMAHA)新たに開業したスタジオ、ライブハウスでJCM800が投入されたことで瞬く間に広まっていきました。70年代までは、雑誌媒体などでMarshallアンプの存在はプロアマ問わずに認識されていましたが、一部のトップギタリスト以外は憧れのMarshallサウンドに触れることはなかったのです。新規のリハーサルスタジオを中心にJCM800が投入されたことで、アマチュアギタリストもそのサウンドを体感する機会を得ることになり、初めて弾いたマーシャルは JCM800 シリーズ2203+1960Aのハーフスタックだったギタリストが殆どでしょう。このような背景もあり「Marshallサウンド= JCM800シリーズ」との認識が体感的には殆どではないかと。

JCM800 を愛用したギタリスト達のサウンドメイク

以前からのMarshallアンプユーザーであったマイケルシェンカーなどをはじめ、LAメタルブームを席巻したスラッシュなど名前を上げたらきりが無いほど、80年代ハードロック/H,M系ギタリストの殆どが JCM800の愛用者と言っても過言ではないほどに普及し、この時代を象徴するアンプでした。
マイケルシェンカーがスコーピオンズ、U,F,Oで活躍した70年代は、その年代(ピンスイッチ期)のMarshall50Wモデル1987を愛用し基本的に歪系ペダルなどは使わず、アンプ直のナチュラルオーバードライブサウンドで現代言われる『クランチ』程度の歪みです。その後のMSG期には50WモデルのJCM800マスターヴォリュームタイプを使ってますが、この時期も70年代と同様にギターとアンプの間にはWahペダルとウェムのエコーチャンバーのみでしたが、依然と変わらぬゴキゲンなシェンカーサウンドを奏でました。

JCM800のMVタイプはマスターヴォリュームによって全体の音量コントロールは可能ですが、歪みはそれ以前のMarshallと大差は有りません。十分な歪みを求めてプリヴォリュームをフルにしてマスターでヴォリュームコントロールを試みても極端に制御した音量では、Marshallアンプのトラディショナルなサウンドスポイルしてしまいます。マスターヴォリュームもある程度上げないとその魅力は半減と言わざるえません。オジーオズボーンバンドのランディローズはMXR ディストーション+を併用してMarshallサウンドをスポイルすることなくオリジナルなドライビングサウンドを構築していました。

この時代は前述のディストーション+やBOSS OD-1,Ibanez TS-9など高性能なペダルが次々と登場しており、LAメタル系のギタリスト達を中心にランディ同様JCM800と歪み系エフェクターを併用することでサウンドメイクを行っていきました。この使い方が主流になっていったことで、後のハイゲインディストーションサウンドへの流れを生んでおり、JCM800シリーズも2チャンネルタイプの『2210』『2205』がラインナップに加わります。

JCM800head
画像引用:https://www.marshallamps.jp/products/amplifiers/vintage_re_issues/2203

1960スピーカーキャビネットも JCM800 シリーズで一新

Marshallサウンドの肝とも言える1960A/Bも新シリーズと共に新たなスペックを持つスピーカーキャビネットとして生まれ変わります。Marshallの歴史の中で100W1959SuperLeadのキャビネットとしてセレッションG12×4装備して誕生した1960A/BはMarshallサウンドを決定づける重要なファクターで、12インチ×4スピーカーを強靭なクローズドバック構造に納め、大音量セパレートキャビネットのパイオニアで、Marshallサウンドの秘密はこのキャビネットに有ると言っても過言ではありません。

JCM800シリーズではセレッションによって開発された耐入力が高いユニットが装備され、キャビネット1台で300Wを許容します。エンクロージャー自体は60年代から続く構造を継承しており、根本的なMarshallサウンドを受け継ぎながらヘッドルームの豊かなサウンドになりました。折しも前述の歪み系ペダルと併用してのサウンドメイクにおいて絶大なアドバンテージをもたらし、その先のハイゲインディストーションサウンドを予想してたかのようなスペックチェンジでありました。

この新たな1960A/Bと共に JCM800 サウンドは誕生し、現在では最もポピュラーで基本となるMarshallサウンドと言えます。

JCM800_1960A
画像引用:https://www.yeahmansguitars.com/products/1982-marshall-jcm800-1960a-4×12-cabinet?variant=21864790720591

なぜ現在でも支持される JCM800サウンド

1981年の発売から40年以上経過した現在まで支持を集めており、生産を終えた約10年後の2000年代にリイシューモデルとして復活し、現在も生産されています。生産終了後、たった10年でリイシューモデルとして再生産開始は通常は考えられず、如何にそのニーズが高かったことを裏付けされます。
JCM800は現代の最先端アンプと異なり、ハイゲインディストーションサウンドではありません。
1チャンネルでリバーブやセンド&リターン機能などもなく、現代のニーズが満足するようなアンプでは決してないのですが、パワーセクションにEL-34 管を搭載し(70年代米国などの一部の輸出モデルは6550管)トラディショナルなブリティッシュMarshallサウンドを受け継いでおり、最も人気を博したマスターヴォリュームモデルである『2203』『2204』は、プリアンプ部にカスケードされたゲインステージが新たに加わり、パワー部でのドライブに頼ることなく多彩なサチュレーションサウンドを可能にし、70年代クラシックロック~70年代後期80年代ヘヴィメタル黎明期へと続く懸け橋と言えるモデルです。

しっかりと継承されたブリティッシュMarshallサウンドをベースにオリジナルなサウンドメイクを容易で、前述のHR/HM系ギタリストのみならず、ジェフ・ベックやPoliceのアンディー・サマーズなどがJCM800をフェバリットアンプに挙げており、プリゲイン/マスターのコントロールによって多彩なジャンルに対応したキャラクターが人気を集める理由の1つでしょう。
勿論、このサウンドにはセレッションG12-75を搭載した JCM800シリーズの1960A/Bキャビネットによって生み出されていることは言うまでも無いのです。更にもう一つの要因は、 JCM800シリーズの登場によってエンドユーザーまでMarshallサウンドが身をもって体感したことで理解を深め、基準であるMarshallサウンドとして認識されたことも大きく、HR/HMの代名詞的なアンプとして圧倒的なイメージですが全てのロック系ギタリストに愛され、圧倒的な現代のハイゲインディストーションサウンドだけではないことをが、かえって人気を集めることになったのでしょう。

アンプヘッドばかりに着目されがちですが、皆さんがイメージする JCM800サウンドとは、新たな1960A/Bスピーカーキャビネットによってアウトプットされることで成立すると言え、見過ごすことの出来ないスペックを持つキャビネットなのです。
1960A/Bキャビネットも各年代で仕様が異なり、その時代の特徴的なサウンドを生んでいる重要なファクターなのです。
たかがMarshallスピーカーキャビネットと思うなかれ!

マーシャルJCM800 DYNAX IR のご案内

日本国内では既に非常に多くのユーザー様にご利用頂いている DYNAX IR、メーカーページにも記載の通り、そのレスポンスと臨場感、音質は他のIRとは比べ物にならない程 高品質なキャビネットIRとなっております。本稿で紹介した マーシャルJCM800もDYNAX IRの中では人気のあるIRとなりますので、是非ご検討ください。

DYNAX Mars1960A キャビネット IR

DYNAX Official Website

HOME > ギターアンプ コラム,NEWS & TOPICS > 近代Marshallサウンドの方向性を決定づけた JCM800 シリーズのキャビネット1960A |

OUTLINE(アウトライン)について

OUTLINEは、当社 株式会社時代社が運営するDYNAX及びTHEONEストアのニュースリリースや技術情報、製品情報を主に掲載しております。自社・サードパーティのエフェクターをはじめハイエンド機器の紹介からレビュー・操作方法などギタリスト目線での記事を配信しています。また好評頂いている DYNAX IR の最新情報も順次公開して参ります。
「読者登録」を頂くことで新規記事を公開した際にお知らせ致しますのでご登録お願い致します。

このページのTOPへ