全てのペダルコンプは MXR DYNA COMP から
ペダルコンプの元祖 MXR DYNA COMP :現在まで受け継がれるその魅力とは?
MXR DYNA COMP (ダイナコンプ)の登場以前、コンプレッサーはレコーディング用のエフェクト機材としての認識が一般的でしたが(現在でもレコーディングにおいては、なくてはならない機材)、MXRはエフェクターとしてプレーヤーのサウンド要求に応える設計を行い、ペダルタイプのコンプレッサーとして初めてリリースされました。
通常、ギターサウンドはピッキングをしたアタック時に音量が最大となりその後は減衰していきますが、コンプレッサーは音を圧縮して音量を均一化することによって、長いサスティーンを実現したり、16ビートのカッティングでアタック感を制御して滑らかなサウンドを演出するなど、補正的な役割のペダルと言えます。
ダイナコンプ は、この様な効果をペダルエフェクターとして操作性を追求しつつコンパクトにまとめ、70年代から現在に至るまで、ジャンルを超えて多くのプレーヤーに愛される一台です。 ダイナコンプ 登場後、現在まで様々な後続ブランドがコンプレッサーペダルをリリースしてきましたが、その全てが ダイナコンプ サウンドを基本として製作されているのは間違いないでしょう。前回ご紹介したROSSコンプレッサー ダイナコンプ の回路設計を基本に開発されたと言われています。
DYNA COMP の変遷とCA3080 OTA IC
ダイナコンプの発売は1973~74年頃。発売された当初は筆記体のスクリプトロゴでしたが、そこからブロックロゴ化、ON/OFFインジケーター搭載、電源アダプター端子の追加など機能がアップデートされていき、現在に至ります。
ICについてはスクリプトロゴ期からブロックロゴ期の初期まではRCA社製のCA3080 CANタイプがオペアンプに使われ、後にリリースされるROSSコンプでも同オペアンプでの設計が採用されています。当時、後続のメーカーはこのCA3080 CANタイプに重要なサウンドのファクターがあると考えていたことが伺えます。CA3080はOTAを集積回路ユニット化し市販された初めてのアンプICです。OTAとはOperational Transconductance Ampの略で、電気的な細かな説明は割愛しますが、オペアンプの一種と理解していただければと思います。
ヴィンテージ期の基板はスルーホール実装による回路ですが、当然ながら現行モデルでは表面実装によりパーツや基板の小型化により生産性の向上を図っています。現行のM102では、OTAをCA3080のアップデートバージョンであり表面実装にも対応したLM13700Nに置き換えていますが、デラックスモデルとなるM228ではヴィンテージ同様のCA3080(CANかソリッドかは不明)を使用。
それぞれチップの変更やコントロールの追加に合わせた回路変更は行っていますが、基本的には70年代ヴィンテージの基本回路を再現することに注力しており、トラディショナルなダイナコンプサウンドを継承しています。しかしながら、現代的なSMD表面実装の基板がノイズ面でのアドバンテージをもたらしており、ヴィンテージ期のネガティブ要素を排除しています。
CANタイプのCA3080はサウンド面で独特なLow-Mid感を持つ印象なのに対し、ソリッドタイプのLM13700NはHi-Fi感が増した傾向にあるように思います。これは、どちらのタイプがベターというわけではなく、使う場面やプレーヤーの嗜好によって分かれるところでしょう。
現在、世界的に再評価されている70年代後期から80年代初頭のニューミュージック・シティポップのようなLo-Fi感サウンドには、初期型やM228と同様CA3080を備えるヴィンテージ仕様のコンプレッサーもあり、フォーカスするサウンドによって選択肢があるのは嬉しい限りですね。
ダイナコンプは裏方ながら効果は絶大
コンプレッサーは、サウンド面の効果では歪み系エフェクターの様な顕著なサウンド変化を求めるものではなく裏方的な要素が強いペダルです。しかし、16ビートカッティングのアタック時のダイナミクスをそろえたり、クリーントーンでのスローアルペジオにおけるサスティーン、クランチ系サウンドでのブースター的な使い方など、使用する場面の多さや効果は絶大です。ただ、Sensitivityを極端に上げてしまうとダイナミクスがスポイルしてグルーブ感などが表現し難くなりますので、バンドアンサンブルの中では注意したいですね。
登場から現在に至るまで、ペダルコンプは多くのプレーヤーが必要とするギアであり、ペダルボードに収めておきたい汎用性の高いエフェクターの一つであると言えます。そして、全てのペダルコンプはMXRダイナコンプから始まり、50年もの長きにわたって絶大な人気を誇っています。
仕様
MXR DYNA COMP COMPRESSOR M102
・入出力端子:1/4”インプットジャック、1/4”アウトプットジャック
・コントロール:OUTPUT、SENSITIVITY
・電源:DC9V センターマイナス
・消費電流値:3.3mA
・寸法:W 5.9cm × D 11,1cm × H 4.8cm
・重量:400g
様々な名エフェクターを生み出し、他メーカーにも影響を与えたMXR
ダイナコンプを生んだMXRの創業は1972年。現在では様々なペダルタイプのエフェクターが市場に溢れていますが、全ての機種のルーツは「MXRから」と言っても過言ではありません。勿論、それまでも数種のペダルエフェクターが存在していましたがかなりのサイズ感がありました。MXRのエフェクターは格段に小さいサイズでデザインされ、現在ではMXRサイズとまで呼ばれるほどに定着しています。MXRサイズが登場したことを機に、エフェクターボード・ペダルボードという運用ができるようになりました。
MXRエフェクターの個々の特徴ですが、例えばDistortion+はチューブアンプのナチュラルオーバードライブサウンドを再現し、「ディストーション」の名を冠した世界初の歪み系ペダルです。それ以前にもFuzz系の歪み系ペダルは存在していましたが、ペダルエフェクターとしてディストーションという新たなジャンルの先駆けとなり、ご存じのように現在でも多くのギタリストから支持されています。
フェイザー系ではPhase45/90/100などの名機も登場し、特にPhase100はペダルエフェクターでありながらきめ細やかなサウンド設定が可能で、クリーンサウンドでのアルペジオ、カッティングギター、歪み系ペダルとの併用など、多様な場面でのプレー音源が存在することからも、人気の高さが伺えます。
同様にFlangerも同じ空間系のペダルですが、クリーンなスペーシーサウンドは当時、圧巻でした。
他にも、70年代にMXRから発売されたペダルはどれも優れたクオリティで、後々日本メーカーが発売するペダルエフェクターにも多大な影響を与えています。当時、為替レートや輸入品の税率などが現在とは大きく異なり海外製品は非常に高価で、一部のプロ以外は後続の安価な国産メーカー品を入手していましたね。確か79年当時でMXRのDelayは定価で10万円でした。後に、国産ペダルを使っていたプレーヤーがMXR製品を入手してそのサウンドの違いに愕然とし、日本国内でも改めて評価されていきました。
https://item.rakuten.co.jp/theone-store/c/0000000128/
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