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Matchless DC-30の特徴とブティックアンプの歴史

スタックアンプ全盛時代に風穴を開けた Matchless DC-30

Matchless は1989年に創業した、現在『ブティックアンプ』と呼ばれるブランドの先駆けとされるアンプブランドです。フラッグシップのDC-30を中心に、その特徴を見ていきます。

Matchless の要点まとめ

  • Matchless は1989年にマーク・サンプソンとリック・ペロッタらが創業しました。
  • DC-30は、EL-84×4のクラスA動作で約30ワットの出力を持つ、60年代Vox AC-30を基本とした設計です。
  • CH2にはEF86管を使い、耐久性の問題を解消して採用しています。
  • スピーカーは左右でG12M-25とG12M-30という異なるユニットを組み合わせています。

Matchless はHR、HM全盛期80年代後半、スタックアンプが市場を席巻していた時代の1989年にマーク・サンプソン、リック・ペロッタらによって創業しました。大手アンプブランドがプリント基板(PCB)を用いて量産化行っていたこの時代に、厳選された高級パーツを使用したポイント・トゥーポイント基盤によるハンドメイド工法よって、良き時代のチューブアンプサウンドを再現しつつ、高い耐久性と独自のエッセンスを加えたアンプをリリースし、現在『ブティックアンプ』とカテゴライズされるアンプブランドの先駆けでした。

Matchless DC-30 アンプ

(https://www.allaccess.co.jp/matchless/dc30sw/)画像先

Matchless DC-30 の設計思想

Matchless のフラッグシップモデルであるDC-30は、60年代のVox AC-30を基本とする回路設計になっていますが、単なるVox AC-30クローンアンプではなく、マーク・サンプソンがAC-30を中心に数多くのVoxアンプレストア、修理を手掛けた中で培った知識(ネガティブ要素も含めて)を反映したアンプでありました。

70年代中頃からマルチチャンネル、ゲインステージのハイゲイン化開発時代を経て、本来チューブアンプが持つ倍音豊かなクリーンを核としたサウンドが渇望された背景ともマッチし、リリース後すぐに米国Guitar Player誌のシューティングテストで絶賛されたことでギタリスト達から注目を集め、確固たるブランドステイタスを築きました。

Matchless のラインナップと製造方法

以降の90年代にDC-30をダウンサイジングモデルであるLightningやEL-34管でパワーステージ構成し異なったキャラクターを持つモデルClubmanなど様々なラインナップを送り出されました。Matchless は『最高のサウンドと耐久性』を理念としてどのモデルも製造されており、シャーシ内部を見ると研究尽くされたサーキットレイアウト、芸術的とも言える美しいポイント・トゥー・ポイント配線、各種オリジナルトランス、厳選されたハイグレードパーツなどと、他社の量産アンプとは一線を画す工法でオリジナルなサウンドを確立しています。

このようなチューブアンプ製造方法がブティックアンプのパイオニアブランドと称される所以でしょう。今回はDC-30を中心にサウンドの特徴などを考察してみます。

DC-30 の回路

(https://ameblo.jp/howlguitars/entry-12599429627.html)画像先

Matchless フラッグシップモデルDC-30

DC-30はEL-84×4でパワーステージを構成して約30ワットの出力を誇ります。「30ワット?出力低くないの?」と思う方もいるでしょうが、音はとてつもなくラウドです。チューブアンプに於ける出力の表記は、実際の聴感上の音量は倍以上に感じますので十分なパワーと言え、ましてやPAシステムが充実している現代では音量に対する心配は無用でしょう。

きらめく飽和した英国クラス A トーン念頭にEL-84×4をクラスA動作によるパワーステージは歪の少ないミッドレンジが特徴で独特のコンプレッション感を生み出します。このクラスA回路は、常に真空管が100%の状態でスタンバイされており、楽器から送られる信号に対して鋭い反応の速さを生み、同時期のFender、Marshallと比べて歪の少ないサウンドも特徴的です。

Matchless DC-30 と Vox AC-30

秀逸なレスポンスはピッキング対する驚くほどの反応の速さで、クラスA/B動作のアンプとは一線を画すサウンドが特徴です。前述のようにマーク・サンプソンは Matchless 創業以前に多くのVox アンプ修理を手掛けており、当時AC-30をメインアンプとするギタリスト達からオーソリティーとして認識される程で、年式による細かな違いや問題点も詳細に把握していました。

Matchless DC-30 のチャンネル構成とEF86管

CH1ではAC-30のトップブーストチャンネルと同じ12AX7でプリサーキットを構成し豊潤なクリーンサウンドを作り出しています。またCH2にはEF86管を使って6段階のトーン機能を持ち低域成分がタイトに変化し、若干高めのゲイン設定でクリーン~クランチ~ドライブサウンドと変化します。

このEF86管はAC-30の前身機種であるAC15に搭載された真空管でAC-30開発時の初期のモデル(AC-30/4)にも搭載されていました。ギターからの信号に非常に良く反応し、高い増幅率でファットなサウンドを誇る特性が有るチューブですが、その構造上、振動に脆弱でトラブルが多くセンシティブな管で、その後のAC-30では12AX7に変更され、一般的に認知されている6インプットAC-30はこれです。

Matchless DC-30 のマスターヴォリューム

AC-30についての造詣が深いマーク・サンプソンは当然このことを認識しており、このEF86管の持つサウンド特性を最大限に生かし、耐久性の問題を解消して Matchless採用し、独自のサウンドキャラクターを生み出しました。マスターヴォリュームを備えていますが、同時期のトレンドであるハイゲインなドライブサウンドをコントロールするようなマスターヴォリュームとは若干違ったスタンスであり、これらの回路特性によって生み出されるコンプレッション感を持つ豊かなミッドレンジの豊潤なクリーンサウンドを中心にドライブサウンドまで、マスターを含めたヴォリュームコントロールで全体のサウンドメイクします。

また、現代のアンプでは当然装備されているセンドリターン機能は有りますが、入力のコントロールするバッファローはアンプ側には設けていません。理想とするサウンドの為に設計した回路に弊害になる機能は付加したくなかったと思われ、サウンド設計に対する並々ならぬ自信の表れを感じます。

Matchless DC-30 リアパネル

(https://ameblo.jp/howlguitars/entry-12599429627.html)画像先

Matchless の注目すべきスピーカー部

12インチ×2のスピーカー部はブリティッシュサウンドを追求しセレッション社のカスタムオーダーとされるユニットですが・・・・なんと、左右異なる特性のユニットがマウントされています。頑丈に設計されたキャビネットに納められたスピーカーユニットはG12M-25とG12M-30であり、入力が異なるです。

製作陣は当時、想像しうるあらゆる組み合わせのシューティングテストを行い、25Wと30Wの組み合わせることにしました。25Wのスムーズな中低域と30Wの持つ特徴的なローエンドに25Wより優れた高域を組み合わせたことで、更なる独自のサウンドキャラクターが生まれました。

Matchless のNormal/Reverseスイッチ

これは、ライブ、レコーディングなど、オンマイクでのセッティングでは、それぞれのスピーカー特性も反映されエンジニアによるサウンドメイクに選択肢も生まれました。また、リアパネルには、Normal/Reverseスイッチが有り、これはスピーカーの位相が反転されます。

一人で弾いてる環境ではこのスイッチによる効果を体感することは難しいのですが、ツインギターなどのアンサンブルで自身のギターサウンが埋もれて抜けが悪い時などに効果的で、プレーヤーに寄り添った機能と言えます。このようにヘッドアンプ部で増幅したサウンドキャラクターを最終的にアウトプットされるスピーカーキャビネット部も含めて最終的なサウンドを構築することで Matchless DC-30サウンド生まれており、幅広いジャンルのギタリストから受け入れられ、1990年代以降のブランドでありながらもチューブアンプにおけるベンチマークサウンドの1つとして認知されているのでしょう。

Matchless に関するよくある質問(Q&A)

Q. Matchless とはどんなブランドですか?

A. 1989年にマーク・サンプソンとリック・ペロッタらが創業したアンプブランドです。ポイント・トゥー・ポイントのハンドメイド工法で、現在『ブティックアンプ』と呼ばれるブランドの先駆けとされています。

Q. Matchless DC-30 は Vox AC-30 のクローンですか?

A. 60年代のVox AC-30を基本とする回路設計ですが、単なるクローンではありません。マーク・サンプソンがAC-30のレストアや修理で培った知識を反映したアンプです。

Q. DC-30 の出力は約30ワットで足りますか?

A. 音はとてつもなくラウドです。チューブアンプの出力表記は実際の聴感上の音量が倍以上に感じられ、PAシステムが充実した現代では、音量の心配は無用でしょう。

Q. クラスA動作にはどんな特徴がありますか?

A. EL-84×4のクラスA動作は、歪の少ないミッドレンジと独特のコンプレッション感が特徴です。真空管が常に100%の状態でスタンバイされ、ピッキングへの反応が速くなります。

Q. EF86管とは何ですか?

A. AC-30の前身であるAC15に搭載された真空管です。高い増幅率でファットなサウンドを誇りますが、振動に弱くトラブルが多い管でもあります。Matchless はその特性を生かしつつ、耐久性の問題を解消して採用しました。

Q. スピーカーが左右で異なるのはなぜですか?

A. 12インチ×2のセレッション社製カスタムユニットに、G12M-25とG12M-30が組み合わされています。25Wのスムーズな中低域と、30Wのローエンドや優れた高域を組み合わせた独自のサウンドです。

Q. Normal/Reverseスイッチは何のためにありますか?

A. リアパネルにあり、スピーカーの位相を反転します。ツインギターなどのアンサンブルでギターサウンドが埋もれて抜けが悪いときに効果的です。

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