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ギターメンテナンス: ネックの反り やナット、指板などの「ネック廻り」のチェック |

ネックの反り やナット、指板などの「ネック廻り」のチェック

ネックの反り で悩んでいるギタリストも多いと思います。ギターメンテナンス の意義は、常日頃から注意深く自身の楽器を観察し、問題点を早期に発見してトラブル解決することで、出来る限り最善の状態を維持することにあると言えます。しかし、毎回ギターを弾くたびに細部まで状態をチェックすることは現実的ではありません。
ただし、ギターを手にするときにまず触れるのはネックとなりますので、ネック廻りチェックのトラブルは比較的見つけやすいかと思います。
ネック廻りには、指板、ナット、フレットなどご自身で対処が難しい箇所も多く、熟練のリペアーマンに依頼する必要がある症例も含まれる為、出来るだけ早期に発見したいですね。
タイミングとしては弦交換などの時に注意深くチェックしましょう。

指板クラック(割れ)などのチェック

まずは、指板の状態を細かく確認していきます。
指板表面にクラック(割れ)が無いか確認をしていきますが、比較的にメイプルなどの塗装されているネックは、指板表面の状態に起因するクラックの発生は稀です。ローズ、エボニーなど塗装されてない指板では、湿度による杢の伸縮の影響で表面にクラックが起きやすくなります。材質による違いとしては、エボニーはローズと比較して固く杢の繊維も細かいために、よりクラックが起きやすいと言えます。
ポジションマークの形による違いもあり、ドットよりもスクエア型、ディッシュ型はインレイの角からのクラック発生が散見されます。レスポールカスタムのようにエボニー指板、スクエアインレイのポジションマークでは、特に注意が必要です。

クラック対策としては、過乾燥が原因ですのでレモンオイルなどを半年に一度くらいのサイクルで塗布しましょう。もちろん、メイプルなど塗装されている指板では必要ありません。
クラックなどを発見したときは、自身での対応は絶対に行わないで下さい。
クラック個所が時間の経過とともに広がることが懸念されますので、出来るだけ早急に信頼できる技術者に修理依頼をしましょう。

指板の状態が起因するフレットの問題

指板の過乾燥などによって生じる典型的な問題として「フレットバリ」が挙げられます。フレットバリとはフレットが指板両サイドに飛び出ている状態のことです。ポジションチェンジの際に手に引っかかり、症状が酷い場合は痛みを感じることさえあります。
フレットバリの発生は乾燥によって指板が縮むことが原因です。金属であるフレットが質量の変化を起こすことは無いのですが、指板は木材ですので過乾燥によって収縮を起こした結果、フレットだけが残りバリとなります。

フレットバリは、ローズ、エボニーなどの指板表面に塗装が施されてないネックに発生しやすいですが、メイプル指板など塗装されているネックでも発生する場合はあります。
初期の軽度な症状では、大して気にならない程度ですが、過度に症状が進行しますと、弾くことが困難な程の状態になります。また、バインディングネックの場合は、指板の収縮によってバインディングがフレットの足に押されて割れが起こることもあります。
フレットバリが発生した場合は、フレットの飛び出た部分をやすりなどで削りフレットエッジを再度仕上げることになりますが、この作業は、自身で行うのは困難ですので熟練のリペアマンへ委ねましょう。

また、フレットはタング部のディンプルが引っ掛かることで指板に収まっていますが、指板が収縮することでホールド力が弱まり、フレット浮きなどが発生する場合があります。クラック対策と同様、定期的にレモンオイルなどを塗布することでこのようなトラブルを未然に防ぐ事ができます。

過乾燥が起因するトラブルは、以前紹介した湿度と温度管理などの頁とも関連しますので、併せてご覧いただければ >>多くのプレイヤーを悩ませるネックの反り

ネックの反り

指板表面の過乾燥以外の要因でのクラック発生例

指板は過乾燥以外にもトラスロッド調整が起因するクラック発生の症例もあります。
ご存知のようにトラスロッドは基本的に順反りを解消する為の装備(順反り、逆反両方に対応するダブルアクションロッドなども現在では存在しますが)であり、ロッドアジャスターを締めこむ事で逆反り方向にネックが作用して順反りを解消しますが、過度に締め付けた結果、ネック内部で意図しない作用が起こり、クラックが発生することがあります。

経験上、アジャスターのある位置でクラック発生箇所が異なり、ヘッド側にアジャスターがある場合は1~3フレット付近で、ネックのヒールエンドにアジャスターがある場合ではハイポジションの最終フレット周辺で発生します。
このクラックに関しては指板表面からの発生ではなくネック内部からの力が原因で起こります。
クラックは指板の接着面側から生じますので表面側からは確認が難しい為、ネック調整の際には注意深く確認しましょう。
また、指板の剝離(ネックバックから指板が剝がれる)も同様の要因により生じることが有りますので、ネックサイドの接着面も確認しましょう。

ナットに問題を感じる時

ナットに問題があると疑念を抱く場合としては「開放弦の音がビビっている」と感じる人が殆どだと思います。
実際、ナット交換依頼でショップにギターを持ち込むプレイヤーは、この症状を感じて交換の必要性を訴えます。
しかし必ずしも「開放弦の音がビビってる」イコール「ナット交換」になるわけではありません。
ナットスロットの深さに問題が無いにもかかわらず、ネックが過度な逆反りを起こして1フレットに弦が接触して「ビビり」状態になってる事も間々ありますが、この場合はナット交換せずにネック調整で解決できます。

一般的にボーンナット交換が必要となる症例は、割れが起因していることが多いです。

移動の際にギグバッグで持ち運ぶことが多いと思いますが、ボーンナットは象牙などの比べて加工が容易で軟質ですので、外部からのちょっとした衝撃で割れたり凹んだりしてスロットの高さに影響し「ビビり」症状が生じます。「ビビり」の症状が、直接確認されない場合でも、弦が接触するスロット底部にクラックが生じていることもあり、その場合は開放弦のサスティーンに影響を及ぼします。

また、外的な要因によるダメージが無くても、長きにわたるプレーにより溝が摩耗して深くなっていることもあります。この場合もまた、開放弦でのサスティーンに違和感を覚えると思います。

弦は常に振動を繰り返し、開放弦に於いては支点の片方を担っているのがナットであり、当然ですがナットスロットのブリッジ側に最もストレスがかかり、摩耗も早いわけです。故にスロット内部で支点がずれて開放弦が美しく響かずにシタールのようなサウンドになってしまいます。常にハードディストーションサウンドでプレーしている方はナットの問題に気づきにくいことがあるので、クリーンサウンドにしてチェックしてみましょう。

ネックの反り を感じたら他の問題点にも目を配ろう!

問題点を早期に発見することは、プレーヤー自身で行うべきマストなメンテナンス項目です。
今回ご紹介した指板の症例などは交換などで対応する修理とは異なり、木部ダメージの補修が必要ですので早期の対処が望ましく、遅れると症状がさらに深刻化することが懸念されます。

いずれにしても、今回のようなケースでは熟練したリペアーマンなどに依頼する事になると思いますが、常日頃、自身のギターメンテナンスの一部として ネック廻り のチェック を行い楽器の状態を把握することが重要です。

実際にリペアで行うナット交換方法、バリ取り、木工補修方法については、またの機会に詳しく触れたいと思います。

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