ギターメンテナンス :多くのプレイヤーを悩ませるネックの反り | THEONE | ハイエンド エフェクターなどの解説
ギターメンテナンス 解説 多くのプレイヤーが直面するネックの反り。温度、湿度の管理はどうする?調整はどうする?
当店「THEONE STORE」の特性上、エフェクターやアンプなど機材についての解説がメインコンテンツとなっている本サイトですが、ギターを扱う者として原点に立ち返り ギターメンテナンス についても触れてみたいと思います。
一概に メンテナンス と言っても数えきれないほど多くの項目がありますが、専門のリペアーマンへ依頼するような深い内容は一旦置いておき、まずはプレイヤー自身で取り組めるエレキギターの管理やメンテナンスについてお伝えしようと思います。初回のこの記事では主にギターの保管とネックの反りの関係、そしてその確認方法やメンテナンス方法について解説します。
ネックの反りはどうして起きるのか
ギターを構成する素材の多くは「木材」です。 メンテナンス ではそういった材質面のフォローも基本中の基本となってきます。そして、多くのギタープレイヤーが悩まされる「材質の性質からくる問題」の1つに「ネックの反り」があります。
木材が曲がる原因については温度と湿度の変化が密接に関係しています。そのため木材を細く薄く加工して作られたネックが温度と湿度の影響を強く受けやすいのは言わずもがな。湿度が高いと木材は膨張し逆反り(ギターを上向き水平にした場合、弧が上を向く)に、低くなると収縮して順反り(ギターを上向き水平にした場合、弧が下を向く)になります。そのため日本では夏は逆反り、冬は順反りとなる傾向にあります。またネックには弦が張られ常にテンションが掛けられているため、順反りの方向に反りやすいとも言えます。
この反りを解消するために、ネックの中にはトラスロッドという金属の棒が通されています。トラスロッドは基本的に順反りの解消を目的として設置されており、ネックに加える逆反り方向の張力をアジャスターによって調整できるようになっています。現在では、ダブルアクションロッドという順反り逆反り双方の張力を調整できるトラスロッドも存在しますが、基本的にはシングルロッドの逆反り張力の強弱のみでネックを調整する方法を覚えれば問題ないでしょう。この調整については当記事の後半で解説していきます。
ネックの反りは時間の経過により起きる現象で基本的に避けることはできません。それでも、トラスロッドによるネック調整の頻度を減らしたいとは誰しもが思うところでしょう。反りを起きにくくするにはどのようにギターを保管・管理すれば良いのか、まずはそこから話をしていきます。
ギターの保管管理
ギターも人も、快適な環境は同じ
ギターの保管環境については理想的な温度と湿度の数値的なデータも存在しますが、各メーカーのアナウンスを総括すると温度20℃~25℃、湿度50%前後が推奨値とされています。
また温度と湿度の関係には、知っておくべきもう1つの要素があります。それは気温によって変化する飽和水蒸気量です。飽和水蒸気量とは「湿度100%のとき、1㎥あたりにどれだけ水分が含まれているか」というもので、気温によって空気中に存在できる水蒸気の上限が異なることを表しています。湿度が同じ数値を指している場合でも、気温が10℃の時と20℃の時では空気中の水分量は倍近くの違いがあり、厳密に理想を追求してしまうと温度と湿度だけの問題ではないと言えるわけです。
しかし実生活の中で、理想値に合わせてギターの保管する環境を細かく調整するのは不可能に近いですよね。実際のところ室内での保管については前述したほど細かいところまで気にしなくても問題はありません。簡潔に一言で言ってしまえば、人が快適に過ごせる環境であれば保管について問題ありません。逆に言えば、人が不快と感じる環境はギターにとっても不適切な保管場所となります。
人が室内で快適に過ごすには、夏場は冷房と除湿をし、冬場は暖房と加湿器を使うと思います。この様に人が快適に過ごせる環境をキープできている部屋はギターにとっても快適です。細かなデータに基づいた厳密な保管環境は、高価なヴィンテージギターでもない限り必要ないでしょう。
では、日常的なギターの取り扱いで気を付けるべきシーンはそんなに無いのでしょうか?実は意外なところに落とし穴があります。それは…
ギターを積んでの車移動は要注意!
ギターを車に積んで移動する際、運転中は車内もエアコンが効いていると思いますので特に問題はありません。しかし、道中寄り道などでついつい楽器を車内に置いたまま車から離れてしまうのは避けて頂きたいところです。夏場はエンジンを切った車内は短時間であってもかなりの高温に達してしまいます。また過ごしやすい時期であっても、直射日光が当たる日中の車内はやはり高温にさらされる危険があります。
例として挙げるのはあまり適切ではありませんが、毎年夏になると子供を車内に置きざりにして死亡・重症となる悲しいニュースが耳に入ります。しかし、声を上げられないという点では楽器も同じようなものです。人にとって過酷な環境はギターにとっても致命傷になりかねません。
ギターには接着箇所も多く過度な高温にさらされると接着剤が溶解してしまう場合があり、そのため修理ができない状態にまで悪化した例もあります。ネックで起きる問題でいえば、指板とネック本体の接着部が緩んでしまうと、本来トラスロッドで適正にアジャストされているポイントが変化してしまい、その後常温に戻るとポイントがずれたまま硬化することになります。こうなってしまうと「トラスロッドを締めても順反りが治らない」「トラスロッドを緩め切っても逆反りのまま」など致命的な状態に陥る恐れがあります。
楽器を伴う車移動時に意外と盲点となるポイントです。車を離れる際は気を付けてください。
こんな積み方をする方はいないとは思いますが(笑)
ディスプレイとしてもカッコいい壁掛けの盲点
先ほど、室内が快適に保たれているなら問題ないとは言いましたが、例え室内であっても注意が必要なケースもありあす。
例えば、もしギターを壁に吊るして保管しているならば冬場は要注意です。暖房により暖められた空気は室内上部に溜まっていくので、対流が少ない部屋の場合、室内の上部は体感以上に温度が高くなっている場合があります。そのため知らず知らずのうちに楽器へダメージが蓄積されている懸念があります。その場合はサーキュレーターで室温を均一に保つなどの工夫は必要でしょう。エアコンの直風が当たらないようにするのも大切です。
また壁際や窓際、クローゼットの中などは、室内の中心部に比べ湿度が高くなっている場合もあります。人が快適に感じる室内であっても、ギターが置かれている場所とあなたがいる場所が果たして同じ環境か?というところも留意する必要があるでしょう。
ギターの保管時は弦を緩めるべき?
ネックの反りを極力抑えるために温度と湿度の変化を少なくすることについて触れてきましたが、先述した弦によるネックへのテンションの影響はどうするべきでしょうか。
普段使いのギターであれば、演奏後に都度、弦を緩める必要はありません。ほぼ毎日のように弾くのであれば、弦のテンションをネックに憶えさせるという意味でもチューニングされた状態での保管が良いと言えます。
ただし、テンションが掛かっているということはネックは徐々に順反り方向に曲がってきますので、長期間演奏しないことが予想される場合は多少チューニングを緩めた状態で保管することを推奨します。ギターを複数本所有している場合はメイン楽器以外あまり触れない可能性も示唆されますので、特に注意が必要です。
ギターメンテナンス 重要要素!ネックの調整
ネックの反りの確認
これまで書いてきた管理方法をきっちり実践できていたとしても、ネックの反りを完全に抑えることはできません。ネックが反っているかの判断材料として一番わかりやすい目安は、サドルで弦高をアジャストしていないにもかかわらず、弦高に変化を感じる場合です。弦が低く感じ、更にわかりやすくビビりがあれば逆反り、高く感じるときは順反りが発生しています。
ギターを手に取りいつものようにかき鳴らして違和感を感じたら、ネックやフレットを目線を低くしてヘッド側とボディ側の双方から目視してチェックしてください。この目視チェックは慣れが必要ですので、わかりづらい場合はギターを構えた状態で1フレットと15フレット前後の弦を押さえ、弦とフレットの間の隙間を1弦、6弦の両方でチェックすると歪みが確認しやすくなります。隙間が少ない、または弦とフレットが密着していれば逆反り、かなりの隙間があれば順反りになります。
また弦高を確認するための専用のツールもあります。ネック反りの確認は勿論のこと、各弦の高さを正確に測ることができますので、サドル調整の際にもお勧めです。
ギターメンテナンス の基本、トラスロッドアジャスターによるネック調整
反りが見られた場合は、先述したトラスロッドに設置されたアジャスターを回して反りを解消していきます。エレキギターの場合、トラスロッドのアジャスターにアクセスできる場所はヘッド側、ヒールエンド側などモデルにより様々ですが、それぞれ適応するレンチなどを使って調整します。
ネックが順反りの場合は時計回りに締め込みロッドの張力を上げ、逆反りの場合は反時計回りに緩めて張力を下げます。ここで注意したいのが、トラスロッドを調整する際は
①弦を少し緩めた状態で行うこと。
②トラスロッドを一度に回しすぎないこと。
この2点に注意して行ってください。
ネックは、弦が張ってありチューニングされた状態で真っ直ぐになるのが正しいため、弦がチューニングされている状態での作業を推奨する技術者やウェブサイトも散見されます。確かに弦を張っていない状態でネックを真っ直ぐに調整しても、そこから弦を張れば順反りが発生することになりますので、弦のテンションが加わっている状態で調整してしまう方が楽かもしれません。
しかし、弦の張力が働いている状態のネックにロッド調整による相反する力を加えることは、意図しない事態を招く事が懸念されます。面倒であっても必ず弦を緩めてから調整を行いましょう。
正しい手順としては、チューニング済でのネックの状態を確認後、弦を緩めてから再度ネックの確認を行い、双方の反りの誤差を見極めてロッド調整を行います。改めてチューニングをして反りの具合を確認し、調整が不充分であればまた弦を緩めて適宜ロッド調整をする、という風に少しずつ繰り返しながら理想の状態に近づけていきます。くれぐれも、チューニングしてある状態でトラスロッドアジャスターを回すことは避けてください。
ちなみに、当ページで画像に使っているFenderについては、トラスロッドアジャスターがヒールエンドにあるモデルのため、そもそもネックを外さなければ調整ができません。
また、トラスロッドを一度に回転させる量は大きくても45~90度までに留めてください。ネックが反っているいるということはそもそも木が曲がっている状態ですので、トラスロッドで急激に真っ直ぐにしてしまうと過剰な力が加わり、最悪の場合ネックが割れることもあります。90度近くまで回しても反りが解消できなかった場合は作業を一旦そこまでにし、また翌日調整という風に少しずつ行ってください。
45~90度と曖昧な表現にしているのは、ネックの材質(柔軟性)やトラスロッドの張力の違いなど、条件によってどの程度アジャスターを回すのかが変わってくるからです。作業を反復していきながら、お手持ちのギターの特性を把握していくようにしましょう。
手に負えないときは素直にプロに相談を
アジャスターがうまく回らない、反りが大きすぎる、捻じれを伴う複雑な反りなどの場合は、無理に作業を続けず専門の技術者に相談しましょう。アジャスターとトラスロッドが錆で固着している場合もありますし、反りの具合が重症である場合はネックアイロンなど更に知識・技術を必要とする作業をしなければならないこともあります。
このように基本的なギターメンテの一つであるネックの反りだけでも想定すべき事が色々とありますが、当記事の内容を理解していただければ、ご自身での調整は可能ですので是非ともトライしてみてください。
アコースティックギターやベースの場合はまた他の要因も加わってきますので若干難易度は上がりますが、その辺はまた別の機会にお話しできればと思います。
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