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日本の エレキギター の歴史と業界 第4話 | THEONE | ハイエンド エフェクターなどの解説

エレキギター の歴史と業界 第4話

日本の中での エレキギター 歴史の第2話、第3話では、日本国内でギターを製造していた2大巨頭のマツモク工業(1987年に解散)富士弦楽器(フジゲン)の黎明期を中心に話してきましたが、GSブームが衰退して70年代入っての楽器問屋、商社と製造会社(マツモク、フジゲンなど)の関係を中心に書いていきたいと思います。

マツモクは1960年代に多くの楽器問屋、輸出商社と楽器製造の取引を手掛けていましたが、中でも荒井貿易との関係が次第に強くなっていきます。60年代中頃、第一次エレキギターと呼ばれたブームを迎えて、ソリッドタイプのエレキギターが主流で生産も好調だった頃、荒井貿易からセミアコタイプのエレキギターが持ち込まれ、生産に着手することになります。その後すぐにビートルズが来日し、GSブームが巻き起こり、エレキギターのブームもソリッドタイプからセミアコタイプへと需要が変化していきます。

荒井貿易

荒井貿易は海外を中心にビジネスをする商社であり、海外の音楽、楽器マーケットに精通する代表である荒井史郎氏はこの流れを予言するかのような先見の明があったのでしょう。
Arai Diamondブランド(Ariaの商標は河合楽器が所有していた関係で後にArai Diamondに変更)のセミアコエレキギターは好調なセールスであり、他社は苦しい経営を強いられ倒産などもある中で、マツモクは大きなダメージを受けることはなくギター製造を続けていきました。
時は60年代中頃に始まったベトナム戦争が激化しており、これに対する反戦運動がアメリカの若者を中心に起こり、フォークギターがブームになります。国内でもGSブームと入れ替わりで、かぐや姫などフォークブームが訪れ、マツモクでも一時フォークギター生産が主流となり市場を席巻しました。

また同じベトナム戦争の最中、アメリカでは1967年モンタレー、1969年ウッドストックなどが音楽フェスティバル開催され世界のロックミュージックが多様化をしてゆく時代でもありました。
国内のミュージシャンも情報が少ない時代に、これらフェスなどアメリカ、イギリスのロックシーンをキャッチすることでそれらのミュージシャンが使用する楽器に関しての情報収集も必死にしていましたが、とにかく現在とは違い楽器以前にアメリカ、イギリスのロックシーンの情報は音楽雑誌、国内販売がされるレコードが殆どと言っていい状態で、販売されるレコードと言っても、そもそも国内においてどの程度ロックミュージックに対してニーズがあるのかも解らずマーケットは確立していない状況で売れるかもわからないレコードを国内販売することはハードルも高かったのでしょう。それら以外では多くの人がF.E.N(Far East Network在日米軍向けのラジオ番組)聴くことで最新の音楽情報を把握していたと思います。
実際、著者もお気に入りのアーティストのニューアルバムがいつ国内販売されるのか?と、レコード店に通ったりしてましたしF.E.Nも聞いていました。本当に情報を手に入れるのが困難で70年代まで続きましたね。

話がそれてしまいましたが・・・60年代から米国に赴いての取引をしていた荒井貿易は1968年のギターショー(おそらくNAMMの前身)で再生産を開始したレスポールを見て、マツモクとコピーモデル製造へ着手します。レスポールのコピーモデルに関しては、後にGreco、Tokai,フェルナンデスが熾烈なコピーモデル競争をすることになりますが、国内で製造されたレスポールコピーは、荒井貿易、マツモクが手掛けたのが最初でしょう、その殆どは輸出だったようです。
その後、70年代に入って外タレロックバンドの来日がラッシュを迎え、彼らが手にするギターはGibsonでありFenderでした。この頃から各社、レスポール、ストラト、テレキャスターなどのコピーモデルを次々と手掛けるようになっていきます。

同じ頃、荒井貿易はGibsonから販売代理店エージェント『日本ギブソン』を取得し、Gibsonから傘下のEpiphoneブランドを製造依頼されマツモクと着手します。Epiphoneブランドは、現在Gibson 傘下のビギナー向けブランドとして80年代中頃から韓国、中国で生産されていますが、その昔、Gibsonとライバル関係にあり、良質なアーチドトップギターを生産するNew Yorkにあるギター製造会社でしたが、1950年代ソリッドギターの時代に入り、1957年にGibson 社に買収され同ブランドの製品はGibson社のブランドとしてGibson製品と同じ工場で60年代末まで生産されておりました。ビートルズが使用したCasinoやTexanはGibsonカラマズー工場で製造されたモデルであり、同時期に生産されたGibson製品と同等のクオリティを持ち、ヴィンテージマーケットではヴァリューの高い楽器です。

エレキギター エピフォン

当時、既に多くのコピーモデルが市場にあふれ、Epiphoneをセカンドブランドとして対抗しようと模索したようですが、Gibson製品と同じ工場で製造していては価格競争で対抗することは難しく、60年代いっぱいでGibson工場での生産を打ち切ります。
そして『日本ギブソン』荒井貿易を通じてマツモクでのEpiphoneブランドの製品を生産し始めるのです。(若い世代のプレーヤーが持つEpiphoneの印象とは、かなり違いが有ると思いますが、元々は良質なギター製造をするアメリカを代表する製造メーカーだったのです)当然、「日本ギブソン」取得後の荒井貿易は、自社ブランドでのギブソン系コピーモデルの生産を即刻中止することになり、マツモクと共に独自のオリジナルなエレキギター開発を進めていくことになります。

マツモクでは富士弦楽器からのOEM生産で神田商会グレコの生産は引き続き行われていました。
1975年頃にはエレキギターに特化した新たなブランドとしてAriaProⅡを立ち上げコピーモデルブームに追随し、新井貿易のAriaProⅡ(マツモク製造)、神田商会のグレコが国内のエレキギター業界をけん引していきました。(荒井貿易は輸出のGibsonコピー製品は止めていたのでしょうが、AriaProⅡブランドでギブソン系コピーモデルが再度販売しており、1975年の国内カタログでラインナップされています。どのようにGibson側へエクスキューズしていたのでしょうかね?)
1977年には、荒井貿易は遂にコピーモデルと一線を画すオリジナルモデルAriaProⅡブランドのPE-1500を強い関係を築いていたマツモクによって開発され誕生させます。現在でも名器と言われるPE-1500はマツモクの林氏(現アトランシア代表)によって「世界に通用するオリジナルなデザイン」を目指して研究開発がされました。
その構造は、シングルカッタウェイ、22フレット、ネックジョイントはセットネックとボルトオン双方を融合し、ネックヒールを無くしGibson、Fenderのウイークポイントでもあったハイポジションでのプレイアビリティ向上を実現したオリジナルデザインのギターでした。
ボディトップ&バック共にカービングを持ちヴァイオリンを思わせるクラシカルな洗練されたデザイン構造で、当時の価格としては異例の定価¥150,000(ハードケース付き)と高額でした。その造りから製造コストを考えれれば止むを得なかったのでしょう。

その後はスペックをグレードダウンしたPE-1000、PE-800、PE-600を発表しビギナーにも手が出せるよう販売拡張をしていきました。国内では渡辺香津美や松原正樹などをエンドーザーに迎えてマイナーチェンジなどの改良を加えながらGibson、Fenderのコピーモデルではないオリジナルなエレキギターとして国内を席巻し、現在でもAriaProⅡを代表する歴史の深いモデルとして生産されています。

荒井貿易は70年代初めに、国内の楽器商社でいち早く海外に進出して、現地のミュージシャンとも深い繋がりを作っていました。海外アーティストとも早い時期から関係を持つようになり、ジャックブルース、マーカスミラー、ニールショーン、ウィルリー、等々、名前を上げたらキリがない位、そうそうたる面々でした。
アメリカではAlembic、B.C Richなどの新興ブランドが産声を上げ、新たなトレンドが起こる中、荒井貿易はそれらの情報も即座にキャッチ出来、その後の新たなオリジナルモデル RS,TS,SBシリーズの誕生に繋がることになっていきます。これら全て荒井貿易のエレキギターはマツモクと共に開発製造され、70年代の爆発的なエレキギターブームを牽引してたと言えるでしょう。

日本の エレキギター の歴史と業界 第5話へ続く

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ガラクタギター博物館様の方では、より深いギター史をご覧頂けますので、是非拝見してみてください。
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