ブティークブランドの元祖と言える FULLTONE は1993年カリフォルニアで始まったギターエフェクターブランド。
ブティークブランドの元祖 FULLTONE
今でこそ楽器店に足を運ぶとエフェクターコーナーには様々なブランドのエフェクトペダルが並んでいますが、30−40年前は国産ではBOSSやMaxon、海外製品ではMXRやDOD、ELECTRO HARMONIX…と、現在のように多数のブランドはありませんでした。90年頃になるといわゆるハンドメイドでエフェクターペダルを作る、いわゆるブティークブランド(ガレージメーカーとも言います)のエフェクターが登場しますが、その中でも最初期に創立したのが FULLTONE です。
ブティックブランドの始まり
FULLTONEは1993年にMichael Fuller(マイク・フラー)によって設立されました。最初期のFULLTONE製品は稀に中古市場で入手することもできますが、ダイキャストケースと塗装によるいかにもハンドメイドを感じさせる製品でした。そしてFULLDRIVE、The’70 PedalやThe’69 Pedal、そしてDeja Vibeなど現在FULLTONEより販売されているエフェクターの原型となるモデルが既に存在していることがわかります。その頃から始まった歴史的名機のビンテージペダルをマイクフラーが分析、研究を重ねるといったFULLTONEのプロダクト作りは現在も続いています。
画期的な発明
現在ハイエンドブランドとして知られるFULLTONEですが、FULLTONEによって最も他のメーカーに影響を与えたのは「3PDT」スイッチです。それまでのエフェクターはエフェクターのオンオフを切り替えるスイッチとして「電子バイパス」か「物理バイパス」のいずれかでした。電子バイパスはFETなどのデバイスを使用する方式で、エフェクトオフの場合にも電子回路をシグナルが経由してしまうことで、FETやバッファーの音のクセがついてしまいます。しかしLEDなどのインジケーターの点灯も同時に制御できるため、BOSSやMaxonなど多くのエフェクターメーカーが電子バイパスを採用していました。
一方、物理バイパスは機械式のスイッチによって信号を切り替えているためエフェクトオフの状態はスイッチの電気的な接点を経由するのみで音質劣化は少ない反面、当時エフェクターのフットスイッチとして使えるものは2回路タイプのものしかありませんでした。また、2回路のスイッチでインジケーターLEDを同時に点灯には工夫が必要で、大切なバイパス信号の音質が極めて劣化してしまう方式しかありませんでした。
そこでFULLTONEはスイッチの回路をもう一つ増設した3回路とした「3PDTスイッチ」を開発します。3回路あればエフェクタへの入力信号をエフェクター回路とバイパス側へ、またエフェクト効果を得た信号を切り替えることができる他LEDの点灯も可能となります。これがいわゆる「TrueBypass(トゥルーバイパス)」です。この画期的なスイッチの登場は、現在の他のメーカーも採用をしエフェクターのスイッチの定番となっています。
FULLTONE そしてハイエンドブランドの代表へ
その後生産規模も拡大しケースも自社デザインのものに移行していきます。その中でも大ヒットとなったのがFULLDRIVE 2です、初代FULLDRIVEにBOOSTスイッチを新たに増設し、ゲインボリュームのブーストを実現しました。世界中のギタリストが愛用することとなり、多くのエフェクターボードに設置されることとなりました。しかしヒットしてもマイクフラーの研究は続き、FULLDRIVEはその後クリッピングダイオードの切り替えを搭載し、さらに幅広い音作りを実現しています。
FULLTONEの大ヒットペダルの登場
FULLTONEのエフェクターの中でも最大のヒット作となったのが2004年に発売された「OCD」です。コンパクトでクリーム色の筐体に馴染みのある3つのノブで構成されたオーバードライブはそれまでのエフェクターで採用するダイオードクリッピングにはじめてMOS FETを使用しました。コンプレッションのある十分な歪みに、ダイナミクスを付加させたOCDのドライブサウンドはとても音楽的なトーンが得られます。OCDもまたマイクフラーにより様々な改良が加えられ、初代OCD V1.0からV1.8まで変遷があります。その後現在のOCD V2になりました。OCD V2はアウトプットに切り替え可能なBufferを搭載する他、心臓部であるクリッピング回路も改良されています。発売から18年が経った今も人気でオーバードライブペダルの代表的な存在となっています、その人気はギターリストのエフェクターボードの中で最も登場することの多いペダルとして専門誌でも取り上げられています。
FULLTONEは絶え間ぬ研究を惜しまない
FULLTONEの製品は、冒頭で説明した歴史的名機と言われるビンテージ機材の研究です。現在マイクフラーの手元には相当な数のビンテージのギター、アンプ、エフェクターがあります。マイクはそれらを徹底的に研究した上で現在の音楽シーンにマッチするネオビンテージと言える製品を開発しています。どのメーカーも製品化できなかったような、ビンテージのテープエコーの名機Echoplexを再現したTube Tape Echoや、Tri-Chorusを復刻したThat’s 80’s Rack Chorusは製造のために必要な特殊なパーツまでも独自で作ってしまうなどマイクフラーの唯ならぬ熱意を感じます。そして現在の製品も常に改良し優れたものへと進化し続けていくFULLTONEの姿勢はこれからも続いていくことと思います。
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