現在3か所の製造拠点を持つ Fender 社 | THEONE | ハイエンド エフェクターなどの解説
Fender 社が持つ3か所の製造拠点 が誕生した経緯は?
Fender 社は1946年の設立以来、長い歴史の中で大きな変革期を何度か迎えており、レオ・フェンダー自身の経営による創設から発展を遂げた(1946~1965)、CBS傘下の時代(1965~1985)、そして現在に至るF.M.I.Cによる復興期(1985~)と3期に大別されますが、中でも1965年のCBSによる買収後のCBS傘下時代は、企業としては成長を遂げることになるのですが、顧問として引き続き在籍していたレオ・フェンダーが70年代初頭に Fender を離れると、製造する楽器のクオリティは徐々に低下し、80年代初頭にはセールス面でも行き詰まる状況に追い込まれることになります。
そんな背景の中でフェンダージャパン、新たなFender であるF.M.I.C、コロナ工場、カスタムショップの設立、メキシコ工場が生まれていきました。Fender とっては激動の時代を1980年代に迎えており、これらがどのように推移していったのかを考察していきたいと思います。
暗黒期と揶揄されるCBS期の Fender
CBSの傘下になったFenderは、大企業の生産方式を要求されて行くことになります。CBS移行後の大きな変化は、まずヘッド形状の変更が一般的に代表されることですが、このアイディアはCBS以前にレオ・フェンダーらにより考案されていたようで、楽器のクオリティに直接影響を与える変更点とは言えません。その後のバインディングネックの採用、ポリエステルを下地に採用した塗装方式(シックスキンフィニッシュ)や3点止めマイクロティルトネックジョイント等々、レオ・フェンダーが追求してきたサウンドを重視した楽器製造プロセスではなく、大量生産のための効率アップが求められ、生産効率の追求が第一となり、品質は徐々に低下していき、CBSによる15年間の経営はレオ・フェンダーが構築した Fender を破壊したと言えます。
70年代末頃には、エリッククラプトンなどのようにCBS生産以前の Fender ギターを手にするギタリスト達が多数おり、Vintage楽器のマーケットが誕生していき、自社の古い製品が競争相手となる皮肉な状況でもありました。1981年にCBSは新たな人材としてジョン・マクラーレン、ビル・シュルツ、ダン・スミスらヤマハ出身の3人を楽器部門に迎えて再生を図ることになります。
彼らは、レオ時代の功績を守り、伝統を継承して Fender の未来を構築することを理念として、様々なことに着手していきました。その後、ダン・スミスによって新たなストラトのモデルが登場しますが、レオ・フェンダー時代のFenderを望むギタリスト達の要求は衰える兆しは有りませんでした。EU、日本市場では、日本製の精巧で低価格のVintage Fenderコピーモデルが席巻している状況であり、もはや Fender のオリジナルデザインを守ることは困難であると考え、日本でVintage 期の Fender ギター生産を計画することになります。
Made in Japanフェンダーの誕生
80年代初頭、自社の楽器クオリティの問題以外にも解決すべき問題を抱えていた。円安ドル高の影響もあり、低価格で高性能な日本製コピーモデルによってマーケットでの競争力を失っていた。日本の各社メーカーは、50年代から60年代Vintage期のコピーモデルを手掛けるスーパーコピー戦争が日本市場で繰り広げられており、完成度の高いコピーモデルが世界的に流通していた。訴訟などでの対抗手段を講じていたが思うように駆逐することは出来ず、頭を抱える問題であった。
そしてFenderギターを日本で生産することで、それらのコピーモデルを駆逐することを決定するのです。
このような背景の中、フェンダー代理店の山野楽器、販売網を手掛ける神田商会そして製造工場をフジゲンの3社によって『Fender Japan』が1982年に設立されます。
この『Fender Japan』は米国の本家Fenderとは別の会社であり、フジゲンがフェンダー傘下の工場になったわけではありません。当初は米国Fender社が同時期にプロジェクトを進めていたVintage Reissueと同様のラインナップを手掛けていくことになります。
CBSフェンダーの終焉~Fender Musical Instruments Corporation(FMIC)へ
80年代に入ってからFender社は深刻な危機的状況に陥っており、遂にCBSはFenderを手放すことを決断することになります。
1981年よりFender 社を取り仕切っていたビル・シュルツらは投資家からの支援を受けて従業員と共に1985年にCBS楽器部門を買収して新たに『Fender Musical Instruments Corporation(FMIC)』発足します。
この売却では、フラートン工場(Fender社の創業から全ての楽器製造を行っていた)は含まれておらず、新たな製造拠点の建設が急務でした。フェンダージャパンでの関係もあり製造部門を担っていたフジゲンによる技術支援で、同年にコロナ工場を建設し楽器製造を開始します。その後、コロナ工場が順調に稼働する中、1987年にFederとフジゲンが共同出資して新たな製造拠点フェンダーメキシコを設立、コロナ工場設立時に技術支援したフジゲン従業員によってメキシコ工場でも技術支援が行われます。
その後のメキシコ工場では同時期に設立された『カスタムショップ』のマスタービルダーらによって定期的に技術指導が行われ高いクオリティのFender製品を製造しています。
また、メキシコ工場着工した同時期にコロナ工場の一角に『カスタムショップ』セクションを設立します。
70年代後期からフェンダーに在籍して楽器製造に従事していたジョン・ペイジらを中心にフジゲン技術スタッフと共にハイエンドモデルを製造するセクションとしてスタートしました。設立当初はワンオフのギターやアーティストモデルなどを中心に製造しており現在の『カスタムショップ』と比べて小規模でごく少数でのスタートでした。80年代終わりには日本人のビルダーI氏(フジゲンのスタッフではない)も在籍していました。
(余談ですが、著者はI氏とこの当時に関りがあり、あるVintageギターショウにブース予約を依頼したことなど有りました。ブース内のサインボードには日本から来ているのにも関わらずCorona.CAの表記だったことを記憶しています)
フェンダージャパンの終焉~ジャパンエクスクルーシブシリーズ
1982年の設立からフェンダージャパンの製造を担ってきたフジゲンはバブル崩壊後の経営不振から多大な負債を抱えており、フェンダージャパンとフェンダーメキシコの株式を売却し、フェンダーメキシコはFender社独自の工場になり、また、3社の合弁会社であるフェンダージャパンは解消されます。その後は神田商会がFender社からライセンスを所得してフェンダージャパンの製造は続きますが、Fender社は2015年に山野楽器との輸入代理店契約を解消して日本に現地法人を立ち上げて『フェンダーミュージックジャパン』として日本国内での販売業務を引き継ぐことになり、同時に1982年から続いたフェンダージャパンは終焉を迎えます。その後はFender社ラインナップの1つとして日本国内製造の『ジャパンエクスクルーシブシリーズ』を現在まで生産を続けています。
フェンダージャパン設立以降から誕生したFenderの製造拠点
このように1982年のフェンダージャパン設立以降に現在のFenderである『FMIC』が誕生し、全ての製造拠点建設に深く関与してきました。80年代からFenderを率いたビル・シュルツらによる原点回帰と言える楽器製造の理念と、日本の楽器製造メーカーによるヴィンテージ期のFenderギターコピーモデルの完成度を極めたタイミングが一致したと言えます。本家Fenderにお墨付きを与えられたことによって誕生したと言えるフェンダージャパンの成功は、新たに誕生した『FMIC』でのFender楽器製造に貢献してきたと言え、フジゲンのみならず日本の楽器製造メーカー各社が70年代から切磋琢磨して黄金期のFenderギターを研究しコピーモデルを製造する中で、80年代初頭には本家Fenderが失っていた製造技術を高めていたことが挙げられると思います。(現在の『ジャパンエクスクルーシブシリーズ』はダイナ楽器が製造)
若い世代のFenderギターユーザーには、現在ある3つの製造拠点の生い立ちを理解することで、自身が持つFenderギターの興味が一層駆り立てられるのではないでしょうか。
Theoneストアのご案内
Theoneストアでは本店、Yahoo店、楽天市場店の3店舗にて運営しています。Yahooと楽天につきましては、各種モールのキャンペーンに参加していますので、お得にポイントをゲットできる日も御座いますので、モールユーザー様は是非ご利用ください。
好評頂いている DYNAX IR に関しましては 本店のみの取扱いとなります。
最新投稿記事
-
RETROLABピックアップ は、最高峰の ストラトピックアップ だと思います!
-
VERTEX SSS ダンブル系プリアンプは 掛けっぱなしが基本!
-
VELVET COMP VLC-1 を modしてみた DYNAX mod
-
Marshallアンプ では 初のコンボアンプ 1962 Bluesbreaker
-
近代Marshallサウンドの方向性を決定づけた JCM800 シリーズのキャビネット1960A
-
DYNAXオーバードライブ 開発開始しています。
-
STRYMON値上げ ! ストライモン 全商品が 2024年3月15日より一斉値上げになります!
-
マーシャル1959 のサウンド決定づけた 1960キャビネット
-
ストラトキャスター の為に開発されたパーツ Fender
-
エレキギターの2大ブランドの1つ Fender の創業者 レオ・フェンダー とは?
-
日本の エレキギター の歴史と業界 第7話
-
日本の エレキギター の歴史と業界 第6話
HOME > エレキギター コラム,メーカー解説 > 現在3か所の製造拠点を持つ Fender 社 | THEONE | ハイエンド エフェクターなどの解説