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電源を甘くみると電源に泣く【2】 – エフェクター電源 の種類! :パワーサプライ 電源回路の違いとは

エフェクター電源 って超大事です!

前回公開させて頂き、好評を賜りました エフェクター電源 について、更にマニアックな続編をお届けします。

エフェクター電源 の種類

  • 1.パワーサプライの種類
  • 2.エフェクター電源 としての電池駆動
  • 3.エフェクターの消費電流
  • 4.リニア・スイッチングの代表的な機種
  • 5.電源プラグのメンテナンス

パワーサプライの種類

アダプターやパワーサプライは壁コンセントから供給されるAC100Vをエフェクターで使用するDC9Vに変換するのが役目です。AC100Vは交流電圧と言われ、DC9Vは直流電圧と電源として違うものです。パワーサプライの電源は「リニア電源」と言われ古くから採用されていた方式と、現在主流となっている「スイッチング電源」の主に2つのタイプがあります。このリニア電源、とスイッチング電源の違いを簡単にご説明したいと思います。
PowerSupply
リニア電源はまず、AC100VをDC9Vの電圧に近い交流電圧までトランスで変圧します。目的の電圧であるDC9Vにするには、概ねAC12-14V位が妥当なところです。低電圧となった交流はその後ダイオードで直流に変換(整流)し、その後コンデンサーを使って半波部分を滑らかにする平滑回路で直流らしい電源にします。この状態では交流電圧100Vの電圧の増減で出力電圧も変動してしまうため、出力電圧を安定化させるための回路が必要です。アダプターやパワーサプライでは、3端子レギュレーターという安定化のための素子を使ってエフェクターに必要なDC9V電源を作っています。リニア電源はトランスがどうしても重量のある部品であるため、リニア電源タイプのアダプターは重量がずっしりとしています。また出力電流を上げるにはトランス大型化が必要で、また3端子レギュレーターなど発熱対策が必要になるなど、総じて大型になってしまいます。リニア電源方式はダイオードが登場する前は、整流管と言われる真空管で行っていました。リニア電源は1世紀近く使われている歴史のある方式でもあります。

Power Supply
スイッチング電源は最近採用された方式で、、、と言いたいところですが実は有人月面着陸計画のアポロ計画のために開発されたと言われています。アポロ計画のロードマップが発表されたのが1967年ですので既に半世紀前ということになります。月面着陸の際に軽量な電源装置が必要で、NASA(アメリカ航空宇宙局)がリニア電源ではなくスイッチング電源方式の開発を急務としたとのことです。話を戻しますと、スイッチング電源はAC100Vの入力電源をまずダイオードで直流にします。その後トランスで必要な電圧まで下げるのですが直流は交流のようにトランスで変圧することはできません。そこでPWM(Pluse Width Modulation)という方式を使って高速で直流のオンオフを行いトランスの2次側に電圧を発生させます。少し複雑な仕組みではありますが、電圧の検知回路とスイッチングを高速で切り替えることにより一定の電圧を得ています。スイッチング電源の名称の由来はここです。スイッチング電源の黎明期はこのスイッチング周波数が低く、音響機材に用いた場合ノイズなどの問題が発生したことから採用を見合わせるメーカーが多数でした。現在はスイッチング周波数が可聴帯域よりも遥かに高い周波数で動作するため「ほぼ問題ない」と言われています。またスイッチング電源はリニア電源に比べ、発熱などのロスが少なく入力電力に近い出力を得ることができます。高能率化は現在も進んでおり、省エネルギーのために現在主流の電源回路となっています。

近年アダプターやパワーサプライがスイッチング電源が主流となっていますが、この理由について考察します。まずはエフェクターやその他機材のデジタル化が進んでいることにあります。デジタル機材で必要な電圧はかなり複雑で、まずAD/DAコンバーターやDSP、マイクロプロセッサーの動作にDC5V/3.3V/1.2Vが必要です。そして入出力のアナログ回路にはDC9-18Vが必要です。これらの複数の電源電圧は内部でDC/DCコンバーターによって変換・供給されていますが、低電圧化したことにより大電流が必要となります。そうなるとリニア電源では大型で重量があるものが必要となるため、どうしてもスイッチング電源に軍配が上がります。またスイッチング電源は入力電圧が90-240Vと幅広い電圧に対応しているものが主流で、メーカー目線で言えば各国向けの電源を設計する手間が省けるのは生産の上で大きなメリットと言えます。

–リニア電源–

利点
・直流としての電源品質に優れる
欠点
・高出力化には大型で重量が増える
・発熱によるロスが多い

–スイッチング電源–

利点
・小型軽量
・電力ロスが少ない
欠点
・スイッチングノイズによりエフェクターによってはノイズが発生することもある

エフェクター電源 としての電池駆動

9V電池

006P 9Vバッテリー、いわゆる角形電池。昔はエフェクター以外にも家電製品のリモコン、ラジコンのプロポ、壁掛けの時計、など使用されていました。006P 9Vバッテリーは積層電池と言われています。電池は単体で1.5V以上の電圧が取り出せないため、006Pは内部に1.5Vバッテリーが6本入って直列で9Vの電圧を取り出せるようになっています。現在は低消費電力化が進み、以前はリモコンや時計も9Vが必要だったものが、1.5Vの電池1本で動作するものが増え、現在は006Pバッテリー = エフェクターの電池と言っても過言ではありません。

エフェクターとしての電池駆動ですが、実はこれが最もクリーンな電源です。アダプターは壁コンセントの商用電源を利用するため電源のノイズがそのままエフェクターにノイズとして乗ってしまったり、またパワーサプライで兼用する他の機材のノイズを誘導してしまうこともあります。バッテリー駆動は1台のエフェクターの専用の電源として駆動するため、外来からのノイズの影響を受けることは皆無です。音に拘るギターリストで有名なエリック・ジョンソンはエフェクターは全て電池で動かすことで知られています。また海外ツアーの多いトップギターリストも現地の電源事情でノイズが発生することを嫌って電池を使うギターリストもいます。電池は使用と共に無くなりますので、交換が必要というのが唯一の欠点です。近年では006Pタイプの充電電池も市販されていますので、是非お試し下さい。

エフェクターの消費電流

パワーサプライやアダプターに「DC9V/500mA」と記載がありますが、これは「DC9V/500mA」はDC9Vの直流電圧9Vを500mAまで供給できるよ、という意味です。500mAのA(アンペア)は電流という意味です。消費電力(W)は電圧(V)x電流(A)で求められますので、仮にDC9V/500mA消費するエフェクターがあった場合は4.5Wの消費電力のエフェクターということになります。ちなみに家電製品で最も電力を消費するのはドライヤーで、ドライヤーは100Vを12Aの1200Wも消費します。

さて、エフェクターで一般的に採用されているDC9Vですがエフェクターは実際にどの位の電流を消費するのでしょうか。測定器を用いて何機種か実測したところ、アナログのオーバードライブやブースター、コンプは概ね10-30mAといった結果でした。デジタルエフェクターも実際の動作は100−250mA以内となりましたが、電源投入時に瞬間的に400mAを超えるものもありました。MAX 250mAのパワーサプライを使用した場合、正常に起動しない(起動時に落ちる)場合もあります。ここは500-1000mA(1A)クラスのパワーサプライを使いたいところです。また許容入力を超えたり、定格近くで動作させた場合電圧が下がってしまう(電圧降下)こともあります。前回の記事で、許容出力の70%でお使いいただくことを推奨したのはこれが所以です。

リニア・スイッチングの代表的な機種

エフェクター電源
現在リニア電源を採用しているパワーサプライとしては、定番のCAJ AC→DC Station VIがあります。AC/DC Stationは入力電源にAC12Vを採用しており、専用のACアダプターが付属します。これが先述したAC100V→AC12Vへ変圧するトランスです。AC12Vそのままでは一般的なエフェクターを駆動することはできませんので、本体でDCに変換するための回路(整流→平滑→安定化)を搭載しています。DC9Vを8個出力することができ、出力電流は合計で450mAとなっています。スイッチング電源と比べると少なく感じるかも知れませんが、アナログのエフェクターを中心にしたボードセットアップであれば十分です。
パワーサプライ

スイッチング電源を採用する機種としてK.E.S KIP-001Strymon Ojaiがあります。KIP-001は入力電圧にDC12Vを、OjaiはDC24Vインプットとなっており、DC9V出力はそれぞれ500mAと大電流に対応となっています。また、スイッチングパワーサプライの多くは各出力がアイソレート(分離)タイプとなっています。アイソレートとは、各DCアウトと電源ラインがグランドを含めて完全に分離させる仕組みです。例えばデジタル機材が発するノイズを、アナログエフェクターが拾ってノイズを増大することや、エフェクター間のグランドループからのノイズ問題を回避することに役立ちます。またDC/DCコンバーターを内蔵しDC9V出力以外に、KIP-001やojai R30はDC12/18Vと出力電圧を切り替える機能を搭載しています。これらは高電圧が必要なデジタルエフェクターやスイッチャーに役立つアウトプットですので必要に合わせてお選び下さい。

電源プラグのメンテナンス

エフェクターの電源プラグは、2.1mm/5.5mmの丸型プラグを使用しています。プラグは主に真鍮や銅などの素材に軽くメッキ加工を施していますが、プラグの先端は露出しており常に空気に触れているため経年変化で酸化してしまいます。これは電源プラグに限らずで、ギターやエフェクターを接続するフォーンプラグも酸化や汚れによって接触不良が生じることはギタリストは少なからず経験があるかと思います。信号が送られているシールドであれば接触不良で音が途切れたりしますが、電源の場合エフェクターが起動しないトラブルにつながります。また、DCプラグで露出しているシルバーの部分はプラグ電極のためエフェクターの動作に致命的な影響がでます。簡単なメンテナンス作業を行なうことで、安心してライブステージやレコーディングを行うことができる他、大切な音質も改善しますので定期的なクリーニングをお勧めします。
ピカール
必要なのは丈夫なクロス、ピカール等の金属磨きです(※コンパウンドはメッキ部を剥がしてしまうこともあるのでお勧めしません)、ホームセンターでピカールのような成分が浸透されている指輪や貴金属磨きのクロスが売られていますので便利です(ギターのフレットを磨くのにも使えます)。これらを使ってプラグ周りをくるくると磨いて下さい、簡単に輝きのある金属になります。最後にプラグにピカール等の成分が残っていることがありますので、厚手のペーパーで拭き取って完成です。シールドのプラグなども同様にクリーニングを行うことができますのでお試し下さい!

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